技術コラム
Technology Column

第6回 油圧装置の保全について

油圧装置は、近年その応用範囲をますます広げており、それに伴って油圧装置の故障率や保守コストの低減の要求も強くなり、一歩進んだ予防保全の取り組みが求められています。故障や不具合の発生時に素早く復旧をする、不具合の発生を出来るだけ早く察知することは装置全体の信頼性を高め安定した装置の運用につながります。油圧装置の保全には、定期的な点検やメンテナンス、油温管理、防塵対策、騒音対策などを行うことが、油圧機器を安全に長く使用するうえで大切なポイントです。

油圧装置の保全について

油圧作動油の保守管理

油圧の力を伝える媒体である作動油は、油圧装置の中でも最も基本的な要素であり、作動油の保守管理を行うことは油圧装置のトラブル対策の最も根幹に関わります。

使用温度の管理

油圧機器は種類によっても異なりますが、多くの油圧機器の稼働中の適性温度はおおよそ60℃までとされています。高い油温で使用し続けることは、油自体の劣化にもつながり、シール材の劣化を引き起こす恐れもあります。また、劣化した作動油は、粘度が低下するため、油圧機器の各パーツで摩耗の原因となることが少なくありません。油温の温度管理を適正に行うには、油温を定期的にチェックし、過度な油温上昇にならないように冷却フィンの清掃を行ったり、オイルクーラー等を用いて管理することが重要です。

作動油への異物混入の防止

油圧装置は、オイルに異物が混入しないようにフィルターが付いていますが、運転し続けると、必ず作動油内に数ミクロン程度の汚染粒子が混入します。混入した汚染粒子は、ポンプやバルブなどの機器内の摺動面やベアリング等に摩耗を起こし、油圧機器の動作不良や、圧力の不安定化・圧力低下など、致命的な不具合につながる可能性が大きく、トラブルの原因となりうる要素の一つです。異物混入を完全に防止することは難しいですが、適切な頻度でフィルター交換したり、ろ過装置を用いてオイルから異物を取り除いたりして、トラブル発生のリスクを軽減することが重要です。

作動油への水分混入の防止

作動油内への水分の混入は、作動油の添加物と反応して劣化を促進させるだけでなく、潤滑不良や機器の錆の発生を引き起こす原因となります。水分が多く混入した場合、作動油は乳化し、白っぽく濁ります。
水分の混入か空気の混入かを判断する方法として、作動油が白濁した際にしばらく経過観察を行い、白濁が抜けなければ水分混入、白濁が解消されれば空気の混入と判断できます。
水分を除去する方法としては、沈降分離、遠心分離、ろ過分離、加熱による蒸発分離、真空脱水、空気送入による脱水 などがあります。そのため、水分混入の可能性が生じた際には、基本的に作動油の交換を推奨します。
さらに、水分の混入を未然に防ぐための対策も徹底する必要があります。

配管からの油漏れの管理

配管部からの油漏れや回路内への空気の混入も、油圧機器へダメージを与えます。油が漏れ続けた場合、周囲を汚染するだけではなく、タンク内の油量が減少し、ポンプからエアーを吸うようになってしまうとポンプが破損することもあります。油漏れを防ぐには、油圧装置を使用する計画段階から、現場への投入後の使用、保全管理に至るまで首尾一貫した理解と実施が必要です。配管自体での工夫は当然ですが、油面を検知するレベルスイッチを設けるなど、漏れを検知しやすい対策を取る事が重要です。

油圧装置の設置

油圧装置は設置環境を考慮せずに運用した場合、すぐにトラブルを起こす可能性があるため、使用目的に応じて油圧装置の設置には十分注意する必要があります。

設置計画

実際に機械が稼動したときのために、機械と油圧装置との位置関係を設計段階で整理し、稼動時に装置同士が相互干渉しないようにしなければなりません。配管の長さはできるだけ短かくし、油圧装置は目視できて近付きやすい位置に取り付けます。回路構成を簡単にして使用機器をなるべく少なくすることも必要です。積層弁や複合弁を使用することによって配管が節約でき、接続作業が簡単確実になり、仕様変更への対応も簡単になります。また、ポンプやモーターなどの回転軸を一致させる芯出しがしやすい設置方式を採用することも重要です。

芯出しについて

油圧装置の芯出しとは、ポンプやモーターなどの回転軸を一致させる作業です。機械の据付や整備の際に、振れやゆがみ、ズレを直すために実施します。芯出しが不適切な場合、回転軸にずれが生じて振動が発生し、突然の設備停止の原因になる場合があり、機械の寿命や効率、安全性に大きな影響を与えます。
芯出しの作業手順としては、

  1. 現在の状態を調べます。(芯ずれや面開きを測定する)
  2. 修正量を計算します。
  3. 決められた許容範囲になるまで、1. 2. を繰り返します。

芯出しのツールとしては、ダイヤルゲージ、レーザー軸芯出し器、金属製の定規、 レーザーを用いた測定器を使用します。
<日東造機製品の芯出し対応について> 日東造機製のポンプは、芯出しの必要がありません。

屋内あるいは屋外での使用

油圧装置は、通常工場などの屋内に設置することが大半であり、それを前提として製作されている事が多いのですが、使用目的や現場の状況によっては屋外に近いような環境での使用となる事もあります。屋外環境に設置する場合は、屋外対応の油圧装置なのか、そうでないのかを確認する必要があります。その場合、直射日光や雨水を防ぐようなカバー・塗装・結線部の保護等が必要です。また、屋内に設置する場合でも、風通しが良い場所など、熱が逃げやすい場所に設置することが求められます。壁際に設置する場合は、壁から1mほど離し、熱が籠らないようしなければなりません。

ゴミ・防塵対策

オイルに異物が混入しないように、粉塵などが少ない環境に設置することも大事です。やむを得ず粉塵等が多い場所に設置する場合は、フィルターのこまめな交換や防塵カバーの使用など、しっかりした対策が求められます。防塵カバーはモーター等の熱発生源を覆う為、熱の放散が問題ないかも考慮する必要があります。

騒音・振動対策

油圧装置からは騒音や振動がどうしても発生してしまいます。オペレーターが作業する環境によっては、騒音値を下げる必要がある場合があります。その場合は、装置自体を防音材を設置したカバーなどで覆ったり、防振緩衝材を装置内や据付地面との間に設置するなどの対策をとる必要があります。防音カバーは防塵カバーと同じく、熱がこもらないように考慮する必要もあります。

定期点検やメンテナンス

油圧装置に関わらず、機械装置は長い年月の使用による経年の劣化を避けることは出来ません。より良い状態で長く使い続けるためには、故障の早期発見が重要となります。また、油圧装置本体だけでなく、安全装置やアース、架台・支柱、計測機器なども含めて定期的に点検する必要があります。
故障を早期発見するためには、以下の項目を定期的に点検・実施し、故障の前兆が現れた時には、速やかに専門の業者に相談する事が大切です。

  1. 作動油の質や清浄度、油温を定期的にチェックする。
  2. 作動油の交換は定期的に行う。
  3. ポンプの異常音やタンク油面の異常変化に注意し、油もれの有無を確認する。
  4. フレキシブルホースを定期的に交換する。
  5. 動作の不良や異常音、異常振動の有無を確かめる。

日東造機の油圧ポンプ製品

日東造機では、様々な場面に対応した小型で高性能な最高圧70MPaの油圧ポンプ・機器を作っています。
用途に応じた製品選択も、油圧機器のプロがご対応させていただきます。 ぜひご相談ください。

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